PEOPLE 24|チェーンソーさん 『あっぱれ!!第一次産業の漢。』
2026.06.02
シン・従業員紹介「HOME ROOM」

 

ひぐちグループで働くヒグチ人をプロライターが深堀りする新企画!
プロが綴る、働く仲間の新たな一面とは?
それぞれの「想い」を知り、繋がりを感じるコラム集。

 


 

PEOPLE 24|チェーンソーさん

『あっぱれ!!第一次産業の漢。』

 

チェーンソーさんは、小さな島で育った。人口は二千人弱。実際に住んでいるのは、その半分ほど。五島列島の奈留島。海しかないような故郷で。当然のように、祖父も父も漁師。代々の船の名前は「泰洋丸」と「開洋丸」。物心ついた頃から、船に乗せてもらった。波に揺られながら、遠くの水平線を、爺ちゃんや親父さんと見てきた。

 

荒っぽい大人たち。酒と怒号。家に押しかけてくる漁師たちの声は、いつも大きかった。だから、海は好きだったけれど、“漁師になりたいか”と問われると、少し違った。それでも——祖父や親父さんの背中は、どこか格好よかった。

 

あの人みたいになりたい。その感覚だけは、ずっと消えなかった。やがて島を出て、彼はリハビリの仕事に就く。人の身体を治す仕事。安定した、立派な職業だった。だが、心のどこかに、ずっと残っていたものがある。

 

それは——山への憧れだった。島には、川がない。高い山もない。テレビの中にしか存在しない“深い森”。その世界に、なぜか惹かれていた。ある日、兄の家でチェーンソーを握る。

薪を切る、その一瞬。音と振動と、木の匂い。あっ!!これだ!!

 

それから十年。迷いながら、踏み切れずにいた。危険な仕事。家族もいる。それでも最後に決めた。「今しかない」と。


チェーンソーさんは、森にいる。朝、山に入る。真っ直ぐに伸びる木々の間から、光が差し込む。静かだ。あまりにも静かで、世界が整っている。

 

その中で、チェーンソーさんは、チェーンソーを握る。木を倒す瞬間は、必死だ。危険と隣り合わせ。だが、倒れたあとに訪れる感覚がある。汗と、達成感と、静寂。森が、少し綺麗になっている。

 

思えば、

祖父も親父さんも同じ景色を見たかったのかもしれない!?

行き帰りの“静かな海の景色”を…。

 

海の男が、森に入った。だが、やっていることは変わらない。自然の中に入り、命をいただき、風景に魅せられながら、生きている。第一次産業とは、仕事というより“生き方”に近い。

 

チェーンソーさんは言う。
「めちゃくちゃ楽しいです」

その一言に、すべてが詰まっている。

血は、嘘をつかない!!

 


 

文/中村修治

有限会社ペーパーカンパニー 代表取締役社長。
1962年近江の地で生まれる。1986年に立命館大学を卒業。1989年にバブルの泡に乗って来福。1994年に㈲ペーパーカンパニーを設立し独立。福岡に企画会社など存在もしなかった頃から30年以上も最前線で生きているプランナー。「JR博多シティ」のネーミングや「テレQ」のCIなどが代表的なお仕事。コラムニストとしても多誌で執筆。福岡大学の非常勤講師も務める。

ひぐちグループとの関係は創業65周年の時から。以降、ひぐちグループの新CIの開発の総合ディレクションを契機に、週イチたまりばの投稿は、200本に及んでいる。

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