HIGUCHI GROUP創業者、樋口謹之助の言葉や逸話を、時代を超えて様々な社員が独自の視点で解説する新企画「謹之助の語り部」
第1回目の今回は、当時パチンコ業界にセンセーションを巻き起こした遊技椅子の導入についての解説です。それではどうぞ。
パチンコ革命!!パチンコ業界初!!遊技椅子の導入!
~お客さんが喜んでくれれば、それは必ず売上に反映する~
謹之助 「この改装を期に椅子を導入しようと思うのだ」
社員 「休憩所を作るのですか」
謹之助 「違う。パチンコ台一台ごとに椅子をつけるのだ。お客さんに椅子に腰掛けてもらって、ゆっくりとパチンコを楽しんでもらうんだよ」
社員 「お客さんは喜ぶでしょうが、社長の持論である”スペースの効率化”に反するんじゃないんですか」
謹之助 「たしかにそうだ。座り心地のいい椅子を置けば、それだけスペースを余計にとられることになる。したがって、全体の機械台数は減ることになる。おそらく新しい2店を合わせても450台くらいしか収容できないだろう。スペース効率は確実に落ちる。しかし、お客さんに喜んでもらうことは、それ以上に大切だと思う。お客さんは憩いと安らぎを求めてパチンコをやりにくるんだよ。その目的を考えた場合、立ちン坊でパチンコするのと、椅子に腰掛けてするのとでは、どちらが目的にあっているか言うまでもあるまい。お客さんはきっと喜んでくれるよ。お客さんが喜んでくれれば、それは必ず売上に反映する。台数の減少分くらいは、すぐに取り返せると私は確信している。」
産業文化史「大衆に憩いと安らぎを」(牧野 茂著)より
今回の語り部 : 取締役 営業本部長 / 山口一夫
上記の内容は、1967年、当時のまるみつ中央橋店に、パチンコ業界で初めて遊技椅子を導入した時の導入意図を説明する、樋口謹之助社長(当時)と社員とのやり取りです。
この背景には、長崎市はもちろん、全国でもあまり例をみない、600台規模の増台計画を実現する為に、土地の買収及び増築に着工したことが発端でした。
遊技場組合で急遽作られた台数規制(上限350台)という自主規制により、断念しなければいけないという状況の中、その打開策として考え出された提供価値と言われています。(結果、店舗は壁を設けて2店舗として合計台数450台でスタートしました)
当時、日本は高度経済成長期の真っ只中で、国民の所得も年々高まり、団塊の世代が大人へと成長していく、活気に満ちた時代でありました。その頃の業界の台数規模の常識は、150台~250台で、増台前のまるみつ中央橋店も230台でした。時代背景から考えると、これは、明らかに需要に対する遊技台の供給不足であり、多くのパチンコ店舗は、それを利用して、高い利益を手にする商売を行っていた時代でした。
この、まるみつ中央橋店での試みには、謹之助社長がパチンコ遊技者に対し、来店欲求を高める、2つの価値を提供しようとしていたことが伺えます。
一つは、増台により遊技台の供給不足を解消して、空いている遊技台しか遊べないというお客様の不満に対して、「遊技台選択肢を増やす」という価値の提供です。
もう一つは、椅子導入により、心身ともに疲れる「立ちパチンコ」の、遊技金額だけでなく時間にも制限を課した遊びになっている事に対する、「余暇時間を延ばす」という価値の提供です。
もっとゆったりと快適に、遊技時間を楽しめる環境を提供したいという思いが伺えます。
※業界で初めて遊技椅子を取り入れた店内の様子
私は、この2つの価値は、一つの提案がダメになったから考えられた打開策ではなく、それまでの業界の店舗都合の提供商品に違和感を持っていた、謹之助社長の以前から考えていた提供価値だったのではないかと考えます。
このように、謹之助社長は、社会の情勢、お客様の動向から、新たな価値を創造し、提供する事で顧客創造を実現していたのです。
それは、今ある手段の選択ではなく、業界の常識の枠を突き抜けたもので、お客様もまだ気づいていない、潜在的欲求に応えるものでありました。
その思考の本質には、常に「お客様の喜びを考え続ける」という信念があると私は考えます。
パチンコ業界は今年(2021年)の秋、業界にイノベーションを起こすと言われる「スマートパチンコ」が登場します。それは、22年23年が、現在の減り続けている参加人口と、閉塞感漂うパチンコ業界に活気と明るさをもたらす、ターニングポイントとなると考えます。
まだ、完成品まで時間を、必要とすると思いますが、これまでのパチンコ店からは想像もできない新たな価値を提供しやすい遊技台が出現する可能性があります。
その時お客様は「え!これがパチンコ店?」と発するような店舗内空間と、ITを駆使した新しい遊技スタイルを体感することになると思います。
パチンコ遊技者のパチンコ店への来店ニーズを実現する手段が大きく変わります。また変えられるパチンコ台が開発されます。
我々は、この変革のチャンスを、お客様創造にどのようにつなげていくのか問われています。これまでのパチンコ店への来店ニーズに、新しいニーズを加えて、対象人口の90%と言われているノンユーザーの皆様に、新しい価値を提供できる、数少ないチャンスが訪れます。
もう一度言います。視点を5年先のお客様の欲求に置き、「お客様が、今 欲しいのは、これではないですか?」といえる、新しい来店ニーズを開発することが「ひぐちグループ」のDNAを承継することになると考えます。