HIGUCHI GROUP創業者、樋口謹之助の言葉や逸話を、時代を超えて様々な社員が独自の視点で解説する企画「謹之助の語り部」。第4弾の今回は、パチンコ事業「まるみつ」に脈々と受け継がれてきた概念についての解説です。それではどうぞ。
HIGUCHI GROUPのパチンコ事業を特徴付ける“思想性”
パチンコとは、お客様を「夢中」に
させるような概念を売る商売である
今回の語り部 : 営業部長 / 太田 光宏
HIGUCHI GROUPのパチンコ部門の経営戦略は、「集中」と「循環」の二つの概念という“思想”が原点となっています。下記内容は、樋口謹之助社長(当時)が、パチンコに対する考え方を当時の幹部社員(城代氏)に「概念」として整理するよう命じたことで実現したものです。
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「集中」とは、短時間にパチンコの玉が連続的に入賞穴に入ることであり、その結果、お客様は夢中になり、一時的に興奮状態になる。そして「集中」のピークが去ると今度はスランプ状態に落ち込む。また時間が経過してピークを迎える。その山と谷の繰り返しが「循環」である。この二つの概念を、いかにうまく組み合わせるかが、パチンコ事業の極意であるというのが結論であった。この考え方は、謹之助が提唱した「夢中」の概念とも、ピッタリ一致し、ひぐちのパチンコ戦略を貫く基本思想として定着した。この「集中」と「循環」の概念を具体化する新しいパチンコ機械の開発に着手し生まれたのが「アタッカー」と呼ばれる機械であった。
産業文化『大衆に憩いと安らぎを』(牧野 茂著)より
私が、樋口謹之助社長(当時)の言葉で忘れられないのが「本質を見抜く」と「概念」という二つの言葉です。
一つ目の「本質を見抜く」について“本質”を辞書で調べると、「定義された全体の中で、そのものとして欠くことができない、最も大事な根本の性質・要素」と書かれています。『大衆に憩いと安らぎを』の中で昭和37年当時、樋口謹之助社長はこのように述べています。
「パチンコの“本質”は大衆娯楽です。たとえ官庁街であろうとパチンコに息抜きを求める人はいるはず」「雑踏の中に憩いと安らぎを求める人間行動、そこに大衆がある。これこそが”本質”である」
このパチンコの本質を皆が理解できるように言葉で表現したのが下記の言葉です。
『パチンコとは、お客様を「夢中」にさせるような概念を売る商売である』
パチンコの本質を見抜き、簡潔に誰でも理解・納得できる言葉として表現していることに、改めてその凄さを感じます。この「本質を見抜く」という思考こそ、樋口謹之助社長が我が社に残したDNAの一つではないでしょうか。現在まで脈々と受け継がれている「夢中」という言葉が、それを物語っているように思います。
もう一つの「概念」という言葉についてですが、著書「大衆に憩いと安らぎを」の中でも「概念」という言葉がよく用いられています。概念とは簡単にいえば「理解している物事に共通している特徴」という意味です。我々は物事を認識するときに、それぞれに共通する特徴を捉えています。例えば猫であれば足が4本あって、顔が丸く、耳がとがっていて、髭がある、などの特徴を捉えて我々は「それが猫である」と認識しているわけです。猫の概念を持っていれば、三毛猫を初めて見た人でも、ペルシャ猫を初めて見た人でも、それが猫であるとわかります。一方、仮に猫の概念を持っていなければ、三毛猫を見てもそれが何かはわかりません。猫の概念が無い場合は三毛猫を個別の動物として認識しなくてはならず、ペルシャ猫も野良猫もそれぞれ別の種類の動物との認識になり、手間のかかる認識作業になってしまいます。したがって、概念を用いることは認識をとても合理的なものにする、ということになります。
謹之助社長が提唱されたパチンコの本質的概念
『パチンコとは、お客様を「夢中」にさせるような概念を売る商売である』
においても、「夢中にさせるような概念を売る」この一文だけで、社員がパチンコに対して共通の価値基準を持つことができます。パチンコ部門の経営戦略としての二つの概念「集中」と「循環」。それらも概念として言葉や文書で表現することで、共通の価値基準を持つことができます。経営戦略として、組織に力を発揮させることが大切です。その時重要になってくるのが社員一人一人が力を発揮しやすい状態を作り出すこと、それを導くのが概念として整理する事であったのだと思います。合理的に組織にやるべき事を正しく認識させる言葉の使い方の凄さが、いまだに私の心に残っています。「概念」として表現することの大切さを今回の執筆で再認識させられました。
「“本質”を見抜いて」、「“概念”として表現する」
我々は創業者が残してくれたDNAを再認識し、後世にも「本質」と「概念」の大切さを継承していかなければならないと思います。