失敗の宝 ~幻のPASTA&PIZZA編~最終話 「学び」
2021.09.17
失敗の宝

 

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これまでのあらすじ

専門店出店を目的とした、PASTA&PIZZAの研究。本場イタリアに2度訪れ調査を行ったPJメンバー3名。帰国後出店準備を進めるも、バブルによる影響を受け、物件家賃が高騰。採算が取れないと判断したメンバーは、3年を費やしたPJに終止符を打ち撤退を決意した。

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「学び」

では我々は本件を通して何を学ぶことができるのか?

一つ目は、「挑戦」するということである。
本件は様々な要因の影響を受け、最終的に出店を取りやめるに至っている。しかしながらそのプロセスでは様々なことに果敢に挑戦している。まったく新しい飲食新業態への挑戦。勝手知ったる市場を離れ、大都市東京都での出店検討。本場の味を求め2か月に渡るイタリア調査。現地の店舗に入り込んでの店舗研修。実に様々な事に挑戦している。最後の最後で想定外の外的要因によって、撤退を余儀なくされたわけだが、未知の世界に果敢に挑戦する姿勢は現在のHIGUCHIGROUPに欠けている事かもしれない。勿論、挑戦には失敗がつきものである。時に手痛いダメージを受けることもあるかもしれない。しかしながら徹底的にお客様の欲求と向き合い、提供する価値を磨くために“これでもか、これでもか”と脳と額に汗をかき続けることが出来れば、結果として失敗だったとしても、そこに至るプロセスの中で、多くの学びを得ることが出来るはずである。20世紀最高の物理学者とも称されるアルベルト・アインシュタインの言葉をここで紹介する。

“Anyone who has never made a mistake has never tried anything new.”

「失敗を経験したことがないという人は、これはつまり新たなことに挑戦した経験がないということだ」

 

二つ目は、目の前の機を掴むことである。
残念ながら本件においては、機を逸することになってしまった。リスク軽減を重視するあまり、リソースとしての時間をかけ過ぎた事が影響しているのは前述したとおりだ。都心部はただでさえ環境変化が激しい。単純に人口が多いと言う事は、価値を消費されるスピードが速いと言う事であり、それによる環境変化が速いと言う事である。さらに情報化が深化した現代においては更に消費スピードは速まっている。今、目の前で起こっている変化、そしてその背後に流れるトレンドの変化を常に注視しておく必要がある。そもそも自分達にとって完璧に優位な市場環境、リスクが無い状況など整うはずはないのである。それを待っていては、目の前の機をみすみす逃すことになる。もちろん、機が熟するのを待つことが必要な場合もあるが、それは時勢に対し間違いなく戦略が先行している場合に限るのである。“歳月人を待たず”という諺がある。これは時の流れは速く、人の都合など待たず刻々と過ぎていくという意味である。市場つまりお客様は我々の変化を待っていてはくれないのである。

 

三つ目は、戦略に柔軟性を持たせることである。
本来戦略とは、外部環境の変化がもたらす機会や脅威に対して、それに適応するために自社の強みを生かしながら資源を活用または蓄積する事を言う。その為には、環境変化がもたらした機会や脅威を明確にし、それに適応する為の方法論を論理的に整理しておく必要がある。論理的に整理された方法論であれば、仮に外部環境に変化があった場合においても、柔軟にその方法論を変更することができ、戦略に柔軟性を持たせる事が出来る。また戦略とは“やらない事を決める”という側面がある。しかしながらやらない事を決めるとは、“手段”としてやれる事の中から、外部環境と自社の特性に合わせてやらない事を決める事であって、最初からその手段を検討しないと言う事ではない。手段の変更を許容しないということは、選択する手段を目的化している事と同義である為、戦略的選択とは言えないのである。勿論、ビジョンやグランドデザイン、経営方針などにブレがあってはならない。短期的な結果に右往左往しても意味がない。しかしながら、目の前で起こる様々な変化に対応し続ける為の手段は、常に選択できる状態にしておく必要がある。常に変化に対応し続けることが出来るものだけが生き残れるのである。

 

2020年10月にHIGUCHI GROUPは創業から70周年を迎えた。70年に渡る歴史の中で先人たちは、様々な事に取り組み、成功と失敗を繰り返して来た。本件はその一端である。会社が事業を継続している限り、過去のすべての成功も失敗も生きた教訓である。これから30年後の創業100周年に向けてこの教訓から何を学びどう生かすのか。全ては我々の自己革新にかかっているのである。

 

失敗の宝 第1部 「幻のPASTA&PIZZA編」 完

 

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