これまでの合計距離 313.75㎞
九州一周まで残り 1186.25㎞‼
今週タスキを受け取ったのは、
初登場の「猫わ癒し」選手!!
猫わ癒し選手の走り(コラム)にご注目下さい!
第47区 走者「猫わ癒し」
「朝の夕焼け」
水平線に浮かぶ稜線が、焼けた色に縁取られた。あかつきから朝になる。朝はいつもやってくる。だが、今日は彼女が三年待った特別な朝だ。大きいランドセルがようやく馴染むようになった年から、ランドセルが役目を終える年になるまで待ったのだ。感慨はひとしおだろう。彼女のくっきりとした大きな眼が、まばゆい明かりに照らされ、より一層拡がっていく。朝焼けの光を浴びる彼女の横顔を見て、私は思う。
━━ようやく叶えてあげられた、と。
彼女がそれを見たいと言い始めたのは、小学三年生の頃だった。しかし初挑戦で、その願いが叶うことはなかった。彼女なりに努力をした。兄に目覚まし時計を借りた。入浴の順番を早めてもらうため、頻繁に仲違いする姉にも頭を下げた。すべては早く起きるため。TVの誘惑も断ち切り、早々に布団にもぐった。甲斐はあった。いつもは起床することができない時間に布団から飛び出せた。勢いそのままに私を起こしに来た。
━━早く行こう!彼女は言う。
車のなかは冷たかった。吐く息は白く染まった。氷のようなハンドルを握り、私は目的地まで車を走らせた。車を降りると、冷たい空気が頬を刺した。思わず亀のように首をすくめてしまう。だが、彼女はおかまいなしにズンズンと進む。
━━早く!間に合わないよ。
逸る気持ちを抑えきれない彼女は、私をさらに急かす。目的地に着いたとき、すでに空は白んでいた。だが懸念があった。雲が空を覆っている。あきらかに彼女が望む風景を見ることができない空模様だ。そしてやはり杞憂にはならなかった。朝を迎えても、望む景色を見ることは叶わなかった。
彼女は肩を落として言った。
━━来年またがんばる、と。
しかし翌年の挑戦は、彼女が風邪をこじらせて不戦敗となった。
さらに翌年は、雨だった。無情な自然現象を不条理と感じていたのだろう。彼女は口を真一文字に引き結び、空をにらんでいた。
そして、ようやく今年だ。予報は晴れ。風邪も寝坊もなかった。目的地に着いたとき、すでに白んでいる空に雲の姿はなかった。絶好の初日の出日和だ。対岸に見える島原半島から朝陽が顔をのぞかせる。空が焼ける。朱に染まる空、娘の呆けた表情がおかしい。朝焼けの光を浴びる娘の頬に一筋の涙が流れた。娘は目を見開き、一言だけつぶやいた。
━━きれい。
私は娘のかたわらで黙って景色を眺める。
━━今年は三年分のいいことがありそう!
娘はそう言うと、踵を返し車に向かう。
━━お父さん、朝の夕焼けってきれいだね!
私は目を丸め、思わず口角が上がった。
四月から中学生になる娘のはしゃぎ顔に、私は、そうだね、と返すしかなかった。