謹之助の語り部 episode11
2021.10.01
謹之助の語り部

HIGUCHI GROUP創業者、樋口謹之助の言葉や逸話を、時代を越えて様々な社員が独自の視点で解説する企画「謹之助の語り部」の第11弾です。それではどうぞ。

 

我々に託されたもの

 

今回の語り部 : 情報開発部 / 杉 雅彦

長い間R&Dセンター勤務の私にとって、謹之助会長(当時)との接点はとても貴重な時間でした。今回は、会長から掛けて頂いた言葉と当時頂いた資料から沢山の学びを振り返ります。

 

「企業の役割」

事業計画発表会の懇親会の席で、突然 私は会長から、
「企業の役割とは何か?」と問われました。
私は答えが浮かばず、苦し紛れに、
「投げ銭を頂くことですか?」と返すと「違う」とキッパリ。
「考えますので5分ほど時間をください」。しばらくして今度は、
「お客様に喜んでいただく事ですか?」と返答すると、
これまた「違う」の繰り返し。更にしばらくして、
「どうねわかったね・・」と聞かれたときはもう頭が真っ白で、
「大衆に憩いや安らぎを提供すること??」
とわけのわからないことを言ったと思いますが、
会長は穏やかな笑顔で、「まぁ間違いじゃあない。しかし、企業の役割は、社会貢献ぞ。これば忘れたらいかん」とおっしゃいました。

まだドラッカーを殆ど知らない当時の私は、後にこの問いの意味をマネジメントの役割のひとつであることとして知ることになりました。

 

「 会長講話と宿題 」

2010年3月までの10年ほど『会長講話』の機会を頂きました。講話ではハーバードビジネスレビューの掲載論文や様々な書籍から数ページの抜粋を題材にされることも多く、これには毎回その後のレポート提出が課題としてセットされていました。

文章に自信が無い私は、会長が読まれたものと同じ全文を読んだら少しはマシな事が書けるのではないかと思い、題材の本を書店や図書館で探して期限ぎりぎりまで読んで提出していました。

レポートはメールに添付して提出しますが、いつも必ず返信を頂きました。意図されたものであったのかは定かではありませんが、この返信がいつも絶妙というか、自分の考えが全く届いていないことに気付かされる内容でありました。それでもあるとき「あんたの書いとることは面白か」と言われました。私は嬉しさから調子に乗り、題材の本について精一杯話し、それを黙って聞いて頂いたことは今も覚えています。そのあと、「そいもよかけど、あんたは田坂広志ば読まんばぞ。これは面白い」と言われました。

いつしかこのときかけて頂いた言葉は、間違いなく今の私を支えるささやかな自信と今も続く読書習慣となりました。


※会長講和に使われていた当時の資料と直筆メモ

 

「我々に託されたもの」

ほどなくして会長から数回に分けて頂いた田坂広志さんの本は、私たちへの課題となりました。

『企画力」『なぜ働くのか』『仕事の報酬とは何か』・・と、どの本もテーマは違えど一貫して、人生観、仕事観、生涯変わらない大切な物とは何か? について問いかけ、深く考えさせられる本です。

最後に頂いた本のタイトルは『未来を拓く君たちへ』。

読まれた人はわかると思いますが、最後の章『なぜ、我々は“志”を抱いて生きるのか』には、謹之助会長が私たちへ託した言葉のように思える内容が書かれています。

会長は私たち全員の幸せを願い、講話を通じて有意義な人生を送る為の智恵と仕事に向き合う姿勢を懸命に教え、企業の発展を託されていたのですね。

我々はビジョンに≪業界のオピニオンリーダー≫になる事を掲げています。今、あらためて“志”への本気度を問われていると感じます。

 

「最後に・・」

当時の講話資料は論文や書籍を抜粋したコピーが紙やPDFで配布されました。それには、使われている言葉の意味を会長が補足した手書きのメモがいつも数ヶ所添えられていました。言葉はその意味を深く理解して使わなければそれぞれの解釈によって独り歩きしてしまう。それを戒めるための謹之助会長の習慣であったと思います。その時の資料は、当時集めた本に挟んで今も自宅の書棚に収まっています。

 

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