謹之助の語り部 episode7
2021.07.15
謹之助の語り部

HIGUCHI GROUP創業者、樋口謹之助の言葉や逸話を、時代を越えて様々な社員が独自の視点で解説する企画「謹之助の語り部」の第7弾です。今回は、店舗出店時に必ず行われる行事“お札入れ”の時のエピソードと、そこに込められた創業者の想いについての解説です。それではどうぞ。

 

「ドラッカー」と「祈り」

 

今回の語り部 : 営業部長 / 瀬戸口 竜也

「ドラッカー」と「祈り」
この相反するような2つのワード、いずれも創業者、謹之助前会長を表しているといっても過言ではありません。前者は、色々な方のコラムで書かれているので割愛しますが、後者の「祈り」は、私が少ないながらもご一緒する機会があった中での、創業者を特徴づけるものです。

今回は、我社の「お札入れ」という行事を通して、創業者の想いを伝えることにします。お札入れとは、我社が店舗を新築する時に必ず、建物の出入り口の地中に「お札」を鎮める行いで、神事、仏事と呼んだ方が適切かもしれません。私も尊厳をもって参列していました。

 

私の記憶では少なくとも10店舗以上、ご一緒させていただきました。前会長がお札を鎮める地面の手前に座り、1ヶ所につき大よそ1時間近くご自身でお経を読み拝みます。神主も住職もいません。1人で全て執り行い、これを全出入り口で行います。私の携わった遊INGや飲食施設では出入り口が少なかったため2~3時間でしたが、パチンコ店になると出入り口も多く丸1日かかっていたようです。担当の部長や店長は、後方でその姿を見守り続けます。店舗といっても全て完成しているわけではないので風も入ります。床はコンクリート土間のまま、電気も通っていないのでエアコンもありません。夏はうだるような暑さ、冬は凍えるような寒さの中、前会長は、一心不乱に祈っていました。その中で常に唱えて下さっていたのが、「商売繁盛」「地域共存」そして、「従業員の安全」でした。

私が思うに、祈りを通して

「自分には直接は何もできません。全ては従業員に託しています。どうか、このお店が地域にとってお役に立てるようになりますように、どうか、働く人たちが安全に過ごせますように」

と願い続けていたように思います。

小柄なお身体で頭を地面に擦り付けながら、祈りの言葉を静まりかえった店内に響かせ続けていました。その行いをすぐ後ろで見ていた私は、「絶対にこの人のためにも、お店を繁盛させてみせる」と心を熱くしたものでした。また、自然に私自身も部下や採用したパートさん1人1人の顔と名前を思い浮かべながら一緒に祈っていました。

 

こうした創業者の姿勢は、今のHIGUCHI GROUPの暗黙知として脈々と受け継がれています。毎朝、出勤時には神棚に手を合わせる風景は日常的です。

「私たちは世の中に生かされている」
「地域に生かされている」
「お客様に生かされている」
「仲間に生かされている」
「だからこそ、常に感謝の気持ちを持ち続けてください」

謹之助前会長が私たちに伝えたかったことは、きっと、こういうことなんだろうと思いました。

ちなみに、この行事後のささやかな楽しみが、食事でした。私たちのためを思ってホテルのレストランによく連れて行って下さいました。そういう気遣いは天下一品でした。そして、たまに財布を忘れてくるのもまた、前会長らしかったです。

「しもーた。財布ば忘れてきたばい、瀬戸口、すまんばってん、代わりにはろーとってくれんね」。

※後日、支払い額以上に頂いていましたこと、付け加えておきます。

 

謹之助の語り部バックナンバーはこちら

一覧へ