週イチ「たまりば」No.32 “穴”があるから立っていられるのよ。
2021.09.29
週イチたまりば

 

“穴”があるから立っていられるのよ。

鳥居の足下には大きな輪になった「沓石」という二重になった大きな石がある。鳥居の柱脚は、その石の”穴”にただ差し込むだけ。固定はされていない。要は、自由に動く状態にある。だから、大きな地震にあっても倒れない鳥居が出現する。

地震のときに倒れてしまった鳥居は、この設計方法を無視して現代の建築理論で建て替えられたものばかり。日本は、古くから何度も大きな地震を経験している。その経験と知恵が”穴”というカタチになって鳥居の足元には残されているのである。

固定しない。
融通をきかせる。
身をまかせる。
消極的なわけではない。
それは、靭性が強いということである。

東日本大震災から10年。日本は、経済成長という大義のもと、ガッチガチの道を歩むばかりである。「未来は約束されています」というリーダーほど危ういのである。未来はよくわからないので、靭性ある社会をなんとしてでもつくるのであるというのが、あの震災から教訓を得た真のリーダーなのではないかとも考える。

楽観主義者は、竹輪を見る。悲観主義者は、竹輪の”穴”を見る。現実主義者は、すぐ食べる。“穴”があるから立っていられる今日がある。“穴”があるから融通が利く社会はできあがる。

ワタシは、あらゆる”穴”を見ている。
ワタシは、悲観論者でもある。
だから、こうして週イチでコラムなんかを吐き出せるのである。

 

 

文/中村修治

企画会社ペーパーカンパニーの代表取締役社長。PR会社キナックスホールディングスの取締役会長。福岡大学非常勤講師。滋賀県出身。Good不動産やJR博多シティのネーミングなども手掛けた戦略プランナー。西日本新聞「qBiz」やitMedia「BLOGOS」のコラムニスト。フェイスブックのフォロワー数は、9000人越え。

http://nakamurasyuji.com/

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