自分にないものは伝わらないのだよ。
“自分に無いものは伝わらない”まったくその通りである。伝わるコトバとは、その人が持っている背景から浮かび上がってくるものである。背景が濃ければ濃いほど、そのコトバの輪郭はハッキリとする。
政治家さんや官僚のしたためるコトバは、いつも立派である。新聞に書かれ、テレビから流れてくるコトバも、いつも理路整然としている。だけど、伝わらないのである。それは、どっかよその、正しいことを言おうとしているからである。みんな良くわかっていないことを、当事者にもなったことのない人が、とやかく言っているだけである。みんな、よそのことを、正しく言おうとしているだけである。
人は「いま、ここにある自分」以上の、
自分以上に「伝わるコトバ」を紡ぐことはできない。
だから「いま、ここにある自分」を見つめて話すしかないのである。「いま、ここにある自分」の中にしか「伝わるコトバはない」と謙虚になることである。
「言葉の幹と根は沈黙である」吉本隆明。おしゃべりがどこか信用できないのは、そういうことである。自分の言うことに一所懸命な人が痛いのは、そういうことである。吉本隆明大明神より少し前。ルードヴィッヒ・ヴィトゲンシュタインっておっさんも、「論考」という著作の一番最後で、『語りえぬことについては沈黙していなければならない』と言っています。沈黙することへの大いなる問いかけ。先達の貴重な意見だと思います。
政治家さんもそうだし、官僚の方々もそうだし、地方の役所にお勤めの方々もそう・・・。総じて「自分で稼いだ経験」をお持ちではない。「いつでも稼げる」感覚をお持ちではない。
だから、一旦手に入った地位やお金を手放せないのだ。そのポジションを守るための選択しかできないのである。手に入った地位とお金で、またお金を増やす利殖が仕事になる。みなさん不安なのである。
会社のブランドも、なんの背景もなしに、月々数百万円の利益を出す。そういう経験をお持ちの方は、きっと貯金など一生懸命しない。その地位にしがみついたりしない。だって「いつでも稼げる。なんとなる。」のだもの・・・。
おかげさまで、ワタシは、喰うに困ることはないと思っている。なんとかなるはずである。だって、オフクロが田舎で待っていてくれるから。家を守って、庭を守って生きているから。苦しくなったら、いつでも帰ってこいと、この歳になっても言ってくれるから・・・。
なんとかなる!このいい加減な商売を何十年も続けられるのは、オフクロやオヤジやご先祖様のおかげである。とても良い秋だ。
文/中村修治
企画会社ペーパーカンパニーの代表取締役社長。PR会社キナックスホールディングスの取締役会長。福岡大学非常勤講師。滋賀県出身。Good不動産やJR博多シティのネーミングなども手掛けた戦略プランナー。西日本新聞「qBiz」やitMedia「BLOGOS」のコラムニスト。フェイスブックのフォロワー数は、9000人越え。