週イチ「たまりば」No.19 企画とは、共に希望を語ること!!
2021.06.30
週イチたまりば

 

 

企画とは、共に希望を語ること!!

東京から福岡への転勤が決まったときに、世話になった版下製作会社の酒井社長から頂いたシステム手帳。以後、30年の間、この手帳が名刺入れになっている。スケジュール管理などしていない。初心を忘れないために、いまも持ち歩いている。

その手帳の中には、ワタシの人生を決めた一枚の紙が入っている。名刺を出すときに、その茶色くなったメッセージの端っこが目に飛び込む。

内発的進化の成長力を!!!と題した小宮山量平先生の言葉である。戦後を代表する出版人の一人で、創作児童文学を育てた理論社の創業社長。2012年に亡くなられた。享年95歳だった。

ワタシが、福岡で仕事を始めた32年前、佐賀県の情報誌の編集企画の仕事で山田洋次監督との対談をお願いしたことがある。テーマは、「子供の居場所」。

取材の当日、対談が行われる場所まで小宮山先生を案内する役だったワタシは、東京に土地勘がないため、何度も道を迷った。山田監督を待たせるは・・・小宮山先生を歩かせるは・・・大失態っ。でも、怒ることなく、あせるワタシに、小宮山先生は、優しい声をかけてついてきてくださった。山田監督にも、一緒にアタマを下げてくださった。若造のワタシを、一人前の人間として、何度もほめてくださった。

来福の際に、博多駅にあった寿司屋で再会した。お勘定までしてくださった。その帰りに、座敷の上がり框で靴を履きながら「中村君、一生、考え続けて生きなさいよ」とおっしゃった。その丸い背中を、いまも、ワタシは追い続けている。

こんな爺さんにワタシはなりたい!!!
内発的進化を続けることのできる爺さんに!!!
マジでそう考えている。

現在を、希望への局面へと押し上げてくれるエネルギーは、若者たちの萌え出る力の中にあると信じ続けられてきた一生に、心から感謝である。臨終間近の病床で「ちっともいい世の中にならなかったねえ」とおっしゃったらしい。
ワタシは、何ひとつできていませんね・・・。

だから、まだね、この手帳は、捨てられないのだよ。
また、泣けてきた・・・。

 

文/中村修治

企画会社ペーパーカンパニーの代表取締役社長。PR会社キナックスホールディングスの取締役会長。福岡大学非常勤講師。滋賀県出身。Good不動産やJR博多シティのネーミングなども手掛けた戦略プランナー。西日本新聞「qBiz」やitMedia「BLOGOS」のコラムニスト。フェイスブックのフォロワー数は、9000人越え。

http://nakamurasyuji.com/

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