文/中村修治
企画会社ペーパーカンパニーの代表取締役社長。PR会社キナックスホールディングスの取締役会長。福岡大学非常勤講師。滋賀県出身。Good不動産やJR博多シティのネーミングなども手掛けた戦略プランナー。西日本新聞「qBiz」やitMedia「BLOGOS」のコラムニスト。フェイスブックのフォロワー数は、9000人越え。
境い目がないと、真ん中もないのだよ。
賛成も反対も。行く人も行かない人も。それぞれに正義がある。みんな自分が真ん中だと思っているが故の混迷だから、世の中は、えらいややこしいことになるわけである。生きている限り、なんか偏ってしまう。偏ったままのところの真ん中が正義となる。それでいい。だからこそ、世の中は、えらいおもしろいものになるわけでもある。
しかし「悟り」は、場所である。そこにジッとしてなんかいられない。境い目を一所懸命考えたり、その境い目を行ったり来たりしているうちに、なんか感じて過ぎていっちまうのが「悟り」だったりするわけである。自分が正義の真ん中だと思った瞬間に、「悟り」は、見えない遠いところに行ってしまうのである。
だから、懸命に、境い目に居る努力をしている。境い目を、上下左右に行ったり来たりしている。ワタシの、バイセクシャル疑惑は、そこらへんに端を発する。アングラの扉を開けてしまうのは、真ん中には、絶対に居続けられないからである。
羽生永世七冠の駒を打つ指先が震えたら、勝負が決すると言われている。それは、恐怖とは違う種類の感情だとは思うが、このエピソードは、とても人間的なものだ。その羽生さんが言っている”人とAIのひとつの境目は、恐怖心を持つかどうか?”だと。
きっと他者への恐怖心ではなく、内にあるものへの畏怖のあるなしが指先に表れるのではないかと思う。自分の内の測り知れないものへの畏怖。自分が怖い。きっと、スゲェ大事な感情である。
ウルトラマンのシワ。
親父が持って帰ってくるエロい週刊誌。
おふくろの色気も何もないズロース。
しょーもない夫婦喧嘩。
サンタさんからだと親が言い張るプレゼント。
学校の担任の先生の舌打ち。
職員室でのいがみ合い。
可愛い同級生の鼻くそ。
友達がこっそりウンコに行ったこと。
子どもながらに、目をつむることを覚えた。
そうして、こんなご立派な大人になった自分が怖い。
カミさんと愛人の境目はわかっているつもりだ。
しかし、彼女とセフレの境い目がわからないままでいる。
お願いだ!!!
誰か教えてくれ!?
こんなお願いをする自分がいちばん怖い。