週イチ「たまりば」No.179 ちょっとタバコを買いに行ってくる…
2025.05.22
週イチたまりば

 

文/中村修治

企画会社ペーパーカンパニーの代表取締役社長。PR会社キナックスホールディングスの取締役会長。福岡大学非常勤講師。滋賀県出身。Good不動産やJR博多シティのネーミングなども手掛けた戦略プランナー。西日本新聞「qBiz」やitMedia「BLOGOS」のコラムニスト。フェイスブックのフォロワー数は、9000人越え。

 

ちょっとタバコを買いに行ってくる…

 

父ちゃんが蒸発した時は、ほぼ100%の確率で「ちょっとタバコ買いに行ってくる」って言うのが最後のセリフである。母ちゃんが失踪する時は、大抵「ちょっと銭湯に行ってくる」である。このように、昭和の時代の不幸せの序章は、たばこ屋や銭湯か舞台だった。

…なので、タバコ屋のばあちゃんは、街の不良の人生の指南役にもなっていたし、銭湯の番台に座るおばちゃんの目は、通う家族の不幸のサインを見逃さなかった。なかなかの人物たちが、市井の暮らしを支えていた。

令和のこの時代は、

そういうリアルな場所がなくなった。
街に蔓延る不幸のはじまりが見えてこない。

親父に「タバコを買って来てくれ」と頼まれたら、

嬉々として行った。
お釣りが、自分の小遣いになるからだ・・・。

そんでもって、

タバコ屋のばあちゃんから褒められて、

なんかちっさな駄菓子なんかも持たせてもらって帰った。

昭和の「タバコ屋」や「銭湯」は、
街のセーフティーネットだったのだよなぁ。

「ちょっとタバコ買いに行ってくる」って蒸発した父ちゃんは、大概、数年後に情けない顔して帰ってくるってのが定番だったもの。笑

 

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