文/中村修治
企画会社ペーパーカンパニーの代表取締役社長。PR会社キナックスホールディングスの取締役会長。福岡大学非常勤講師。滋賀県出身。Good不動産やJR博多シティのネーミングなども手掛けた戦略プランナー。西日本新聞「qBiz」やitMedia「BLOGOS」のコラムニスト。フェイスブックのフォロワー数は、9000人越え。
ちょっとタバコを買いに行ってくる…
父ちゃんが蒸発した時は、ほぼ100%の確率で「ちょっとタバコ買いに行ってくる」って言うのが最後のセリフである。母ちゃんが失踪する時は、大抵「ちょっと銭湯に行ってくる」である。このように、昭和の時代の不幸せの序章は、たばこ屋や銭湯か舞台だった。
…なので、タバコ屋のばあちゃんは、街の不良の人生の指南役にもなっていたし、銭湯の番台に座るおばちゃんの目は、通う家族の不幸のサインを見逃さなかった。なかなかの人物たちが、市井の暮らしを支えていた。
令和のこの時代は、
そういうリアルな場所がなくなった。
街に蔓延る不幸のはじまりが見えてこない。
親父に「タバコを買って来てくれ」と頼まれたら、
嬉々として行った。
お釣りが、自分の小遣いになるからだ・・・。
そんでもって、
タバコ屋のばあちゃんから褒められて、
なんかちっさな駄菓子なんかも持たせてもらって帰った。
昭和の「タバコ屋」や「銭湯」は、
街のセーフティーネットだったのだよなぁ。
「ちょっとタバコ買いに行ってくる」って蒸発した父ちゃんは、大概、数年後に情けない顔して帰ってくるってのが定番だったもの。笑