週イチ「たまりば」No.8 「おかげさまで」と「おたがいさま」。
2021.04.07
週イチたまりば

 

「おかげさまで」と「おたがいさま」。

「世間は冷たい。他人は助けてくれない。」という人に限って、自分から何かを頼んだ経験の少ない人が多い。その反面、誰かが空気を読んで困ってる自分を助けてくれないかという屈折した甘えを抱いている。

 

前向きな気持ちで、他人に甘えたことのない人に限って、自立、自立と騒ぎ立てる。困った。「甘え下手」なあかんたれの増殖は、社内を硬直化させる。自立したい人ばかりが増えているところに、日本経済復活のウィークポイントはあるのではないだろうか。

 

実は、頼まれたら断れない。それが、人間である。そうでもない人が増えているとは感じるが、世間は、そんなに捨てたものじゃない。スーパーで、目当ての商品が見つからなかったら、自分で探すより、店員さんに聞いた方が早い。悩んで迷うより、目の前にいる他人に聞いた方が早い。

 

自立とは、他人に依存しない力をつけることではない。

他人の力をいつでも使えるようなネットワークを構築するとこである。

 

 

ビジネスにおいて、上手に甘えてもいい間柄のお客様の総量が多いほど、確実な売上げが確保できる。難しいマーケティング論議をしているより、甘えられるお客様に聞いちゃった方が、納得のいく答えが出たりする。

 

自立した個人と自立した企業の間に、継続できるビジネスの芽は生まれにくい。不完全な個人と企業の相互依存と相互努力の間柄の中に、次のビジネスの可能性はあると思う。「おかげさまで」と「おたがいさま」。あまり使われなくなった言葉にビジネスの現場力再生の鍵はある。

 

朝帰りしても、カミさんに怒られない。納期が少しずれても、クライアントから怒られない。日々の、甘え上手が功を奏している。日々の、相互依存と努力の賜である。皆さんのおかげで、私は、今日も生きている。

 

今日も、ほんとに、締切りを守れずにゴメンなさい。

 

 

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文/中村修治

企画会社ペーパーカンパニーの代表取締役社長。PR会社キナックスホールディングスの取締役会長。福岡大学非常勤講師。滋賀県出身。Good不動産やJR博多シティのネーミングなども手掛けた戦略プランナー。西日本新聞「qBiz」やitMedia「BLOGOS」のコラムニスト。フェイスブックのフォロワー数は、9000人越え。

http://nakamurasyuji.com/

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