失敗の宝 ~幻のPASTA&PIZZA編~第1話 「渡航」
2021.06.03
失敗の宝

1980年代中頃の話である。ひぐちグループの飲食新業態開発を目的としたPJチームの3名はイタリアに赴いた。

 

イタリアは地中海に突き出たブーツ状のイタリア半島が特徴的な、南ヨーロッパに位置する共和国である。総面積は30万1,338㎢。本州と北海道を足したぐらいの面積と言えばそのサイズが想像出来るであろう。半島に沿う形でアペニン山脈が南北に走っており、国土の大半を山岳地帯が占める。気候は温暖で、北部の一部を除き温帯の地中海性気候に属し、西のリグリア海、東のアドリア海、南東部のイオニア海が豊富な海の幸をもたらす。この地理的環境が豊かな食文化の発展に多大な影響を与えてきた。

 

PJチームのイタリア渡航の目的はPASTAとPIZZAの研究であった。

当初は、得意先からの提案もあり生パスタ用の製麺機の輸入販売を検討していた。現在同様1980年代中頃のひぐちグループも、飲食業やパチンコ業、ゴルフ場や金融業など経営の多角化を推し進めていた。その中で、空気清浄機「スモッグホッグ」の輸入販売や、農業肥料「ハーモニーZ」の販売といった商社としての一面も併せ持っていた。その中での提案であった。

 

時代は1980年代末から始まる、所謂「イタ飯ブーム」の前である。一般的に洋食と言えばまだまだフレンチを意味する時代だった。とは言え、イタリアンについても東京などではサバティーニやChiantiなど一部の高級店が話題になり始めていた頃だ。また小規模ながらパスタ専門店も出現し始めていた。PJメンバーはこういった状況から、今後のイタリアン市場の伸びを予見した。「遠くない将来、必ずイタリアンのブームが訪れる。そしてそれは一過性で終わらず、社会的認知を得て一定数以上定着する」
ある種の確信めいたものを感じたPJメンバーは、パスタ製麺機の販売を取りやめ、得意分野である飲食店で勝負する事を決めたのである。

 

第2話「踏査」へ続く

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