文/中村修治
企画会社ペーパーカンパニーの代表取締役社長。PR会社キナックスホールディングスの取締役会長。福岡大学非常勤講師。滋賀県出身。Good不動産やJR博多シティのネーミングなども手掛けた戦略プランナー。西日本新聞「qBiz」やitMedia「BLOGOS」のコラムニスト。フェイスブックのフォロワー数は、9000人越え
トヨタよりトミカ!?
日本のミニカーの代名詞ともなっている「トミカ」。
その歴史の中で一番売れた車種は、さて、いったい何でしょう?
1:日野はしご消防車
2:古河ホイールローダー
3:コマツブルドーザー
4:トヨタ2000GT
5:ポケモンバス
ご覧のように、子ども達の選択するブランドは、トヨタや日産ではない。
日野や古河やコマツなのである。
歴代上位は、全部「働くクルマ」なのだ。
トヨタや日産ののっぺらぼうな乗用車を選ばずに、ひとつひとつに特徴のあるクルマを選択してきているのである。一目でわかるユニークな形を子供達は望み、ミニカーを通じて大人達が働く姿に思いをはせている。理屈抜き&仮説なし=前提のない選択には、正義がある。
ワタシ達は、そんな大事なことを身体で知っていながらも・・・社会やテレビから流れてくる前提に絡め取られていく。そして、トミカの「働くクルマ」で遊んだ子供達は、、、いつしか、安定した職業を望み、、、同じようにエコを唱え、、、プリウスに乗る。
こんな有名なジョークがある。
“アメリカのNASAは、宇宙飛行士を最初に宇宙に送り込んだとき、 無重力状態ではボールペンで文字を書くことができないのを発見した。 これではボールペンを持って行っても役に立たない!
NASAの科学者たちはこの問題に立ち向かうべく、10年の歳月と120億ドルの開発費をかけて研究を重ねた。 その結果ついに、無重力でも上下逆にしても水の中でも氷点下でも摂氏300度でも、 どんな状況下でもどんな表面にでも書けるボールペンを開発した!!
一方、ソ連は鉛筆を使った。”
前提に縛られるか。それとも、最初から前提なしの状態で物事に取り組むか。その姿勢ひとつで獲得できる成果は変わる。凄いアイデアマンや企画の人間は、その問題に取り組むときの前提の捉え方が違う。むしろ前提すらないところから始める。子供の頃に、トミカの日野はしご消防車を選択したような無垢な視点で・・・。そして、そのビジネスの結果は、社会正義となる。
こういう時代だからこそ、マーケッターやプランナーは、『アホな子ほどかわいい』説を体現するべきである。トヨタやホンダや日産の戦略を賢い頭で分析する前に・・・日野のはしご消防車や古河のホイールローダーで遊んだ・・・前提に縛られない柔軟な頭を取り戻してほしい。
集客には、マーケティングコストがかかるって考え方は、もう古い。お金のかかる集客の概念を覆すのが、これからの戦略プランナーの仕事だと考えている。そのためには「自分が本当に楽しいと思うことをし続けること」。働くクルマで1日中遊ぶことができたころのことを思い出すこと。
トヨタよりトミカである。