週イチ「たまりば」No.18 目の前の嘘を抱きしめる!!
2021.06.23
週イチたまりば

 

目の前の嘘を抱きしめる!!

“大抵のメロンソーダは嘘の塊だ”こんなツィートを見たことがある。そんなの昔から知ってる。騙されながら飲む。嘘は美味い。なにより本物より美味しい。不倫デートのドタキャンの言い訳は、嘘八百である。子どもが熱を出したから。親が遊びに来ることになったから。騙されたふりをして、他の人妻とアポをとる。嘘の方が、真実である。

新社会人になった長女は、ふたりきりのデートの度に「お父さん、お母さんに嘘をついているでしょう!?」とカマをかけて聞いてくる。吐いた言葉は、多かれ少なかれ嘘だよと言い逃れることにしている。娘は、親父のこの戯言を、どのように聞いているのか!?知る由もない。書いたって、喋ったって、吐き出した言葉には、すべて意図がある。ちょっとだけ嘘をついている。どんなに伝え尽くしても、真実は、そこにはない。ちょうどいいくらいの嘘が、ちょっと盛ったりしたくらいの嘘が、要は、バレることない嘘が未来を創っているわけである。

元気にやっているか!?と聞いたら、元気!と答える。東京は楽しいか!?と問えば、楽しい!と答える。彼氏はできたか!?と突っ込むと、キモい!と答える。娘たちとのやりとりは、嘘の塊である。そんなの小学2年生の頃から知っている。真実などわからない。親孝行な娘たちである。

今日も友達が遊びに来た。詩吟とダンスで忙しかった。按摩に行く日やったのに忘れていた。毎日のおふくろのメールには、カラ元気という嘘が盛られている。こちらも、棺桶まで持っていくつもりのちいさな嘘を散りばめて返信する。

真実よりも口実という嘘を愛してナンボである。目の前の嘘を抱きしめてやる。常備薬のような嘘をメロンソーダで流し込み続ける。だからね、好きになった女性には、一生騙し続けてくれと願う。一緒に仕事をすることになった仲間には、一生同じ夢を追いかけようやと願う。騙し騙しの事実が、真実になっていく。だからね、一生のお願いだから・・・。

文/中村修治

企画会社ペーパーカンパニーの代表取締役社長。PR会社キナックスホールディングスの取締役会長。福岡大学非常勤講師。滋賀県出身。Good不動産やJR博多シティのネーミングなども手掛けた戦略プランナー。西日本新聞「qBiz」やitMedia「BLOGOS」のコラムニスト。フェイスブックのフォロワー数は、9000人越え。

http://nakamurasyuji.com/

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