文/中村修治
企画会社ペーパーカンパニーの代表取締役社長。PR会社キナックスホールディングスの取締役会長。福岡大学非常勤講師。滋賀県出身。Good不動産やJR博多シティのネーミングなども手掛けた戦略プランナー。西日本新聞「qBiz」やitMedia「BLOGOS」のコラムニスト。フェイスブックのフォロワー数は、9000人越え。
完全なる静寂がいちばんうるさいのだよ。
世界一静かな場所は、人口的に作られた「無響室」である。反響を99.99%を吸収する。外からの音は何も聞こえない。手を叩いても、音はすぐにかき消され、何か話そうとしても、言葉は口から出た瞬間に、壁や天井、床のパッドに吸い込まれてしまう。そうすると様々な音が体内から溢れ出て来る。自分自身が音になっていく。人間の精神は、この生々しさに耐えられない。自分の存在を消すための幻聴まで聞こえて来るという。
雑音が聞こえているから、人間は、まともで居られるのである。
赤ちゃんたちの笑顔は、殺されないための生存戦略である。ならば、なぜ、赤ちゃんは、あんなに泣くのか?イライラするくらい泣くのか?きっと、信頼できる親を選択するためである。
反響の中で、営みは、生まれ続けている。
死ぬ間際まで残る五感は『聴覚』だそうだ。幽体離脱なんていうのは、その残った聴覚のイメージであると言われている。おぎゃーと生まれてから、ずっと反響の中を生きるているということだ。そして、体内から溢れ出て来る音まで止まった無響の状態が「完全な死」である。
ワタシの声は、親父の最期に届いたのだろうか!?
ワタシの最期には、誰の声が聞こえるのだろうか!?
考えれば考えるほど、こころがザワザワする。
血管の脈拍や関節の骨が擦れる音が聞こえる。
完全なる静寂ほどうるさいものはない。
言い換えると”完全なる静寂”がうるさいほど聞こえてくるのは、
生きているという証拠でもある。
2022年も始まった。
新年も雑音の中で、豊かなイマをつむいでいこうと思う。