ハタラク。Like-Work-Driven vol.1:「eスポーツ従事者の仕事観」
2023.04.03
ハタラク。Like-Work-Driven

 

ライスワークではなくライクワークで駆動する仕事人の [シコウとコウドウ] を様々な解釈で切り取る新企画-ハタラク。Like-Work-Driven-
※シコウとコウドウ・・・思考と行動/志向と考動/私好と好働

HIGUCHI GROUPの「思考と行動の価値基準」をコアに据えながらも、「シコウとコウドウ NO!ガチ基準」とバイアスを“斬る”フリースタイル・トークで“好働 [コウドウ] ”を実現するための視点やヒントを探ります。

 

第1回目の今回は「eスポーツ従事者の仕事観」と題して、国内でも様々な形で広がりを見せるeスポーツの「施設」「教育機関」「プロプレイヤー」「県連合」から20代、30代の従事者が集まり、その仕事や仕事観について語ります。

 

- あまり馴染みがないと思いますので、
まず初めにeスポーツ連合の取り組みについて教えてください

山﨑さん 》 活動の方向性としては、現在、大きく4つあります。
まず「教育×eスポーツ」。今日、先生にお越しいただいていますが、部活動支援やeスポーツを通じた不登校支援などがそれにあたります。それから「健康×eスポーツ」ではシニアの皆様向けに交流や運動、認知症予防など。また障がいのある方に向けては「福祉×eスポーツ」として、地域社会への進出機会や就労機会の創出などの支援活動を行っています。そして4つ目が「経済×eスポーツ」で、地域の活性化、地方創生のイベントなどがあります。昨年夏の浜町アーケードで実施したイベントがそうですし、チクリンカップ(「鉄拳7」公式大会)など本格的なものもあります。

このようなイベントや活動の企画と運営を軸に、eスポーツの普及・振興を通して地域社会・経済の発展に寄与することを目的としています。

 

- 山﨑さんの仕事はどのようなものでしょうか?

山﨑さん 》 自分はeスポーツ・ディレクターですので、時系列に分けると、まず事前には企画書や台本をつくり、関係者間の調整、演者様の手配、メーカー様への許諾申請、場合によっては予算面でのスポンサー様との商談もあります。そしてイベント当日はディレクターとして現場で会場設営からイベント運営全般の指揮を執ります。終わってからはイベント動画のチェックや報告書の作成です。イベントの運営や動画の編集などはESPNの技術スタッフにお願いしています。

 

- E-SPORTS PORT -Nagasaki-(ESPN/遊ING浜町店3F)は
どのような施設ですか?

鷲崎さん 》 先ほど山﨑さんが言われたようなイベントを日常的に小規模で開催している施設です。週末や祝祭日は色んなイベントを行っていまして、企業や団体の方には「うちの施設でイベントを開催しませんか」、一般の方には「イベントに参加しませんか」といった感じで、気軽にeスポーツに触れていただける施設です。ゲーミングPCや機材などもありますので、触ってみて気に入ったら買っていただければいいと思います。

山﨑さん 》 連合の主な活動拠点にもなっています。

 

- ESPNのイベントには誰でも参加できるのですか?

鷲崎さん 》 どなたでも大丈夫です、初めての方でも大丈夫です。むしろ初めての方に遊びに来ていただきたいです。イベントが無い平日などは、会員になっていただくと1時間無料でプレイできますので、どんどんeスポーツに触れてほしいです。

 

- チクリン選手の講習会なども行われていますが、
「鉄拳」以外のイベントもあるんですか?

鷲崎さん 》 あります、あります、いろんなイベントがあります。

山﨑さん 》 この間、行きましたよ、VR体験。お客さんとして普通に楽しみました。

鷲崎さん 》 eスポーツに親しんでいただく施設ですので、すべて無料でやっています。 「なんか買ってください」とか「アンケート書いてください」みたいなこともありませんので、イベントには気軽に参加してほしいです。「自分はちょっと・・・」と恥ずかしがったり、「弱いんで~」とおっしゃる方もおられますが、何も気にせずに遊びに来てほしいです。何なら私たちスタッフが(そんなに強くないですが)対戦相手にもなれますし、「一緒にプレイして、一緒に強くなろうよ!」って感じで楽しみたいです。

山﨑さん 》 僕、しょっちゅう参加してます、プライベートで。

長郷先生 》 そういえば、この間、造大祭のスマブラ大会(※)でうちの生徒が決勝まで勝ち上がったんですよ。その決勝の相手が山﨑さんだったんですけど、高校生が上がってきているんだから手加減してくれればいいのに・・・。
※造大祭:長崎総合科学大学の学園祭で開催されたスマブラNiAS杯

山﨑さん 》 勝ちました!その高校生は僕よりちょっと格上ですけど勝ちました!!優勝しました!!(ドヤ)
年齢とか性別とか関係なく盛り上がれるのがいいんですよ。
チクリンさん、分かりますよね。国籍とかも関係ないですもんね。

チクリン選手 》 国籍関係なく友達になりますからね~。いいプレイするとギャラリーも対戦者も関係なくハイタッチしたりして、すごくいいんですよ。

山﨑さん 》 そんな場面を見るだけで気持ちいいです!

鷲崎さん 》いや~、eスポーツって負けてこそ(強くなる)って思うんですよね。悔しさが糧になっていると思うんで。

 

- 鷲崎さん、それ何目線ですか?(笑)

鷲崎さん 》 僕なんかeスポーツのこと、まだまだ分かってないかもしれないですけど、ESPNでプレイしている方を見ているとそう感じるんです。eスポーツも(リアル)スポーツも一緒ですよ。

チクリン選手 》 でもほんと、そのとおりですよ。負けないと強くならないです。

山﨑さん 》 「次は勝つぞ!」って、自分でいろいろ調べるし、攻略するために対策を考えるし、悔しいからそうなるんです。

 

- 先生、そのあたり、学生さんたちの部活動での様子はどうですか?

長郷先生 》 高校生も県内ではeスポーツを部活動としてやっているところがまだ少ないんですけど、先に始めたところがやっぱり強いので、「そこが目標、そこに勝ちたい!」って一生懸命やって、それで勝てたら一気にモチベーションが上がるといった感じです。

山﨑さん 》 高校生は成長速度がすごく速いです。

長郷先生 》 ちなみに高校生の大会などでもESPNさんにはお世話になっています。ありがとうございます。

鷲崎さん 》 こちらこそ、ありがとうございます。

山﨑さん 》 ESPNにはコーチもいるので、しっかりカリキュラムを組んで、目標設定して、試合ごとにミーティングで戦術を修正したり、プロの動画を見て学んだりしながら、1日の終わりには反省会して、宿題を出して、それにフィードバックしたりしています。

 

- 山﨑さん、ちゃんと仕事してるじゃないですか。(笑)

山﨑さん 》 生徒さんたちにはイベントのお手伝いなどもお願いしていますので、いろんな経験ができているんじゃないかと思います。

長郷先生 》 そのやり取りの中で、生徒たちも最初はチャット感覚でメールしていたのですが、ビジネスメールの打ち方なども教えて、少しずつ色んなことを身につけながら、だんだんと自分で考えて行動できるようになってきています。
私自身も1年間でここまでeスポーツに関わるとは思ってなかったんですが。(昨年)4月ごろに突然、乗り込んでこられて・・・。(笑)

顧問になってからは3年ぐらい経ちますが、部活ではもともとロボコンやプログラミングをやっていて、生徒たちはeスポーツも含めて全部に携わりながら、自分で一番やりたいことを選んで、それをメインに知識や技能を身につけていきます。ゲーミングPCの組み立てなんかも説明書だけ渡して「よし、やってみよう!」って感じで。どうしても分からないところだけ手伝いますが、動画などを探して見ながら自分たちで考えてやっています。動画の編集や配信が好きな生徒もいて、この前ボソッと「遊INGで働きたい」って言ってました。

 

- 遊ING(エンタメ事業)の仕事もずいぶん変わってきましたが、
鷲崎さんはこれまで編集などの経験があったのですか?

鷲崎さん 》 ゼロです。編集の経験はゼロです。もともとゲーム担当だったんですが、ESPNができてから仕事が変わりました。動画の編集は楽しいですよ、大変ですけどね。やればやるほどクオリティが上がっていくのでおもしろいんですよ。配信などは失敗も多いんですけどね。生配信なんかは必ず何かしらのトラブルがあるので毎回、新しい学びがあります。

長郷先生 》 最近は子どもたちのなりたい職業がユーチューバーだったり、eスポーツ選手だったりするので、学生たちもそこに関わって身近に見られるのでいいんですよね。

鷲崎さん 》 自分もこれまで配信や編集のことを勉強してきたわけではないんですけど、色々教えてもらいながら何とかやっています。仕事の依頼がきたら自分で調べてやってみて、だんだんできるようになってきて「おもしろいな!」って。(技術的には)ちょっと遅咲きですけど、成長を感じることができて楽しいです。

 

- どうですか、遊INGチームの仕事ぶりは?

長郷先生 》 いつもムチャぶりを聞いてくれて助かってます。逆もあるんですが、そこはお互い様かなと思っています。

チクリン選手 》 素晴らしいですよ。チームワークもいいと思います。

 

- チクリン選手はひぐちグループに入社して
プロのプレイヤーとして世界を舞台に活躍されてますが。

チクリン選手 》 入社当時は世界大会に出た実績も無かったですし、海外の大きな大会で勝てるかどうかも分からなかったので、会社としても賭けだったと思うのですが・・・。
「夢があるな」と多くの人に思われないといけないので頑張らないといけないですね。

山﨑さん 》 eスポーツのプロを目指すって、どんな感じですか?

チクリン選手 》 自分たちの世代はプロが無い時代からやっているので、本当に「ただ強くなりたい」という延長線上でこの業界ができたって感じですが、もしかしたら今の若い人たちとは少し違った感覚かもしれないですね。

 

- あらためてお聞きします、
プロプレイヤーとしてのご自身や業界をどのように捉えていますか?

チクリン選手 》 大会の成績をみると日本では上の方だと思うんですが、全然強いとは思ってないです。世界のTOP50に入るのかなぁ?入らないんじゃないかなぁ?・・・。(ボソボソ)
TOP層を集めたトーナメントを10回やったとして、「優勝できない確率あるよなぁ」って考えると抜けてはないですね。ズバ抜けた強さというか、まだまだ誰もが認める一番ではないので、そこを抜けたいですね。

鷲崎さん 》 そこに至るまでにまだ足りないものがあるってことですか?

チクリン選手 》 めちゃくちゃあります、山ほど課題があります。あとは強いかどうかだけではなくエンタメ性も高めて盛り上げたいですね。「鉄拳」は世界では競技人口が多いですが、日本だと他のゲームと比べるとまだまだ伸びしろがあります。格闘ゲームだとストリートファイター、業界全体だとFPS(※)が人気なので、自分がもっと有名になって盛り上げないといけないですね。
※FPS:First Person Shooter  一人称視点シューティングゲームのジャンル総称。

 

― チクリン選手には大会以外にも色んなイベントに参加してもらってますが。

チクリン選手 》 普通に小学生の子が一生懸命(僕のことを)倒しに来てくれるんです。
悩んだ末に・・・自分が全部勝つんですが・・・。(全員爆笑)
ギリギリ(勝つか負けるかのことろ)でやるんですが、どっちがいいのかな~って・・・。

鷲崎さん 》 プロとしての実力を魅せるべきなのか、勝たせて喜んでもらうべきなのかってことですよね。

チクリン選手 》 自分としては「プロの人、すごいな!」と思ってもらえる方が業界のためなのかなぁ~と・・・。難しいですよ、本当に。子どもたちも「もうちょっとで勝てる!」ってなるので、それで練習するからいいのかなぁ~って。それが正解だったのかは分かりませんが・・・。

鷲崎さん 》 10年後ぐらいに分かるかもしれないですね。「あの時、チクリン選手に」って人が出てくるといいですね!

チクリン選手 》 最高ですね!感動しますね、そんな子が来たら。

 

それぞれ違った立場から様々な切り口でeスポーツ業界について語っていただきました。
鷲崎さん、長郷先生、チクリン選手、山﨑さん、ありがとうございました。
(写真左から)

 

取材場所:大衆割烹  樋口(長崎市築町)

 

編集・ライティング / HIGUCHI GROUP広報室

 

《関連記事》
チクリン選手 単独インタビュー
「鉄拳ワールドツアー2連覇ならず-惜敗の裏側-」はコチラ

 

一般社団法人 長崎県eスポーツ連合
HP https://esports-nagasaki.com/
Twitter https://twitter.com/esportsnagasaki

E-SPORTS PORT -Nagasaki-
Twitter https://twitter.com/esp_nagasaki

 

一覧へ