週イチ「たまりば」No.116 なぜ、黙って座ればピタリと当たるのか?
2023.11.30
週イチたまりば

 

文/中村修治

企画会社ペーパーカンパニーの代表取締役社長。PR会社キナックスホールディングスの取締役会長。福岡大学非常勤講師。滋賀県出身。Good不動産やJR博多シティのネーミングなども手掛けた戦略プランナー。西日本新聞「qBiz」やitMedia「BLOGOS」のコラムニスト。フェイスブックのフォロワー数は、9000人越え。

 

なぜ、黙って座ればピタリと当たるのか?

 

 

「黙って座ればピタリと当たる」。そんな霊媒師や占い師がいたなら、混迷を極めるいまをいかに生きるべきかを聞きたいところ。 でも、「黙って座ればピタリと当たる」には、カラクリがある。いやいや、努力と言うべきか・・・。そこには、厳しい時代を乗り切るテクニックがある。

 

コナン・ドイル原作の名探偵シャーロック・ホームズには、実在のモデルが居ることは、いろんな文献で言及されている。モデルになったと言われているのは、ジョセフ・ベル博士。初対面の人にささいな特徴からその人の症状や性格を言い当て、周囲の人々を驚かせる優秀な医師だったようだ。「黙って座ればピタリと当たるお医者さん」が、名探偵ホームズのモデルだったのだ。

 

ベル博士の口癖は「ただ見る(see)だけではなく、観察(observe)せよ」であったと言われている。この言葉にあるように・・・ベル博士の能力は、霊能ではない。占いではない。

 

ベル博士の手法=能力は、『コールド・リーディング(Cold reading)』というらしい。「事前の準備なし=コールド」で、「相手の心を読む=リーディング」という意味で、霊能者や詐欺師が相手を信じさせるために使う時の話術のひとつ。

 

雑談や、その人の顔や、様子をうかがうだけで、その人の個人的な 情報を引き出していくテクニックであり、超能力でも、霊能でも、何でもない。具体的な質問はなしに、さりげない質問とその時の周辺情報から推理を重ねて言葉にする。これは、警察の尋問にも使われているテクニックで、悪ではない。むしろ、尊敬すべき話術であり、心理的テクニックだ。

 

さりげない質問の答えと微妙な様子の変化から、「現在」と「過去」を炙り出す・・・「現在」と「過去」は、そのまんま「その人の性格&生活スタイル」なので・・・その目の前のヒトの未来の結末は、簡単に予測できるわけである。そこまでやられると、ヒトは「未来」を託す。信じる。思うがままだ。

 

優秀な営業マンや企画の人間は、無意識に『コールド・リーディング』をしている。クライアントとその担当者の「過去」と「現在」が見えたら、自ずと「未来」は、決定する。その「未来」に対して、プラスになる意見を述べることができれば、信頼を得られる。当たり前の原理である。

 

この『コールド・リーディング』に対して『ホット・リーディング』というのもある。これは占い師より、海外の職業霊媒師などが行っている。コールド・リーディングが何の準備もないのに対して、こちらは周到に準備をする手法を指す。

 

本当に、霊能があったり、超能力があったりするヒトが居ることは否定しない。むしろ、そういうヒトが、ぜひ居て欲しいとも思っている。

 

霊媒師や占い師の多くの人達は、『コールド・リーディング』ないしは『ホット・リーディング』の使い手なわけである。国際情勢も安心できない。天変地異のリスクにはいつもさらされている。そんな日本においては、霊媒師や占い師の方々が、さらに忙しくなると思う。

 

その言葉を信じ込んだり、当たらないと言って怒ってみたりするより・・・霊媒師や占い師の方々の、テクニックや営業努力に目を向けて、学んだ方が賢い。「黙って座ればピタリと当てる」には、ただ見る(see)だけではなく、観察(observe)するヒューマンテクニックが、そのヒトを知るための情報収集と膨大なデータベースが、必要なのだ。

 

「黙って座ればピタリと当てられる」ことに一喜一憂するのではなく、その霊媒師や占い師に話しを聞きたくなってしまった自分や、この時代を、いま一度、観察(observe)し、情報収集をしてみてはいかがだろうか?自分の過去と現在によって、ライフスタイルが決定されて、そのまま未来が読まれてしまう。そんな、占いや霊媒の簡単な公式に当てはまらない「未来ある自分」となるために・・・。

 

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