週イチ「たまりば」No.90 1万時間の“一所懸命”。
2023.04.27
週イチたまりば

文/中村修治

企画会社ペーパーカンパニーの代表取締役社長。PR会社キナックスホールディングスの取締役会長。福岡大学非常勤講師。滋賀県出身。Good不動産やJR博多シティのネーミングなども手掛けた戦略プランナー。西日本新聞「qBiz」やitMedia「BLOGOS」のコラムニスト。フェイスブックのフォロワー数は、9000人越え。

 

1万時間の“一所懸命”。

 

 

「一生懸命」の元々は、「一所懸命」だったのをご存知だろうか?鎌倉時代、“武士が賜った一カ所の領地を命がけで守り、それを生活の便りとして生きたこと”に由来している。字のごとく “一つの所”に命を懸けることだった。

これが、貨幣経済の時代に移り変わっていくうちに、領地がそれほど切実なものとは感じられなくなり、「所」ではなく「生」となり、「一生懸命」と表記されだしたというわけだ。

命がけでやります。一生懸命やります。そんなことを軽々しく言う奴ほど、仕事への期待は薄い。一生懸命やるのを見たことない。それは何故か?

そういう輩に限って「一所懸命」が見つかってないからだ。仕事でも良い、家族でも良い、 “一つの所”に懸けることが見つかっていない者は、「一生懸命」になれるわけがないのである。

良く考えていただきたい。「一生もの」と呼ばれる作品は、“一つの所”に懸けることを見つけ出した職人の手によってのみ生まれている。「一生もの」は、「一所懸命」な人たちによってのみ創造されているではないか。「一所もの」こそ、ひとつの人生を懸けるに値するものなのである。

例えば、ビートルズは、どのようにして一生もののステイタスを手に入れたのか?ジョン、ポール、ジョージと最初のドラマー・スチュアート・サトクリフがリバプールでグループを結成し、弱小バンドとして過ごした日々が約5年=演奏1万時間であると言われている。リバプールでの1万時間の「一所懸命」があってこそのビートルズなのである。

「千日をもって鍛とし、万日をもっと錬とす」は、『五輪の書』に記された言葉である。宮本武蔵の伝説は、千日の「一所懸命」から生まれている。

世間には、情報がいっぱいある。おいしい話しがゴロゴロしている。 “一つの所”に懸けることを見つけ出すのは難しい時代になった。だからこそ、1万時間を、千日を、懸けられる「一所もの」を早く見つけることをお薦めする。それこそが、「一生もの」の勝ち組になるための近道なのである。

 

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