週イチ「たまりば」No.98 “デススパイラル”のお話。
2023.06.29
週イチたまりば

文/中村修治

企画会社ペーパーカンパニーの代表取締役社長。PR会社キナックスホールディングスの取締役会長。福岡大学非常勤講師。滋賀県出身。Good不動産やJR博多シティのネーミングなども手掛けた戦略プランナー。西日本新聞「qBiz」やitMedia「BLOGOS」のコラムニスト。フェイスブックのフォロワー数は、9000人越え。

 

“デススパイラル”のお話。

ワタシは、新卒の年から2年強、東京で暮らしました。会社が勝手に決めた上板橋のアパートから、麹町の事務所まで、東武東上線→地下鉄有楽町線というひでぇ混雑する電車に毎日乗っていました。東京の思い出は、満員電車の思い出だと言っても過言ではありません。

 

奥にいたら降りるに降りられないので、降りる駅が近づくにつれて、乗降を繰り返して、ドアの方へ移動するのです。そういう術を学びました。誰かが邪魔をするようなことがあったら、みんなイライラしているので、それこそ喧嘩です。その場をまーるくおさめようと、みんなが無言の配慮をします。それはそれで、都会の美学だと感心していました。ある意味、都会の方が、人に優しいのかもしれません。

 

いまワタシの住む福岡の電車には、そういう沈黙の配慮がありません。電車に乗る際、ドア付近に塊り奥に入っていこうとしませんし、ホームでドアが開いても、ドア付近の方が通せんぼしてしまうのを良く見かけます。

 

こういう光景を見るたびに”デススパイラル”という言葉が浮かびます。軍隊アリが15時間もの間、休むこと無く円を描くように歩き続けて大量死した。この現象を、そう名付けたみたいです。虫や動物は、ある一定の数以上に繁殖すると、大量自死などの行動を起こすことが知られています。

 

ワタシは、思うのです、必要以上に人間が増えた大都会・東京では、常に、そういう危機にさらされているのです。だから、自ずと自制するのですね。自分たちの身を守るために、暗黙のルールをつくるのです。命の危険すら感じる電車に毎朝乗ることによって、他者との距離感のつかみ方を自然と覚えます。

そう!!!デススパイラルに陥らないために・・・。

 

このデススパイラルの経験のあるなしは、とても大きな違いです。
人間としての習性が変わってきます。

 

要は、福岡の人たちは、デススパイラルに陥る環境にいないので、ホームドアが開いても、ドア付近で通せんぼしちゃうのです。だって、命の危機がないだもの・・・仕方ありません。

 

働き方改革だ。
ワークライフバランスだ。
リモートワークだ。
もう人間は、デススパイラルに陥る危険はなくなるのかもしれません。
こりゃマズイですね。

 

沈黙の配慮がなくなるから、、、
生きづらくもなるのもうなづけます。
危機感のない動物ほどやっかいなものはありません。
そう思いません????

 

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