謹之助の語り部 episode13
2021.12.01
謹之助の語り部

HIGUCHI GROUP創業者、樋口謹之助の言葉や逸話を、時代を越えて様々な社員が独自の視点で解説する企画「謹之助の語り部」の第13弾です。それではどうぞ。

 

社是の体現

 

今回の語り部 : 人事部 / 柿山 朋寿

私は、2000年に入社後、2005年に人事部へ異動してから、約5年間、幸いにも、樋口謹之助会長と、同じ空間で仕事をさせて頂くことができました。その間で印象に残っていることについて、話します。

 

【社是の体現】

当時も本社では、毎週月曜日、全体の朝礼として、各部各課が取り組んでいる内容などを、当番制で5~10分程度発表しておりました。

当時は、比較的若手の社員が発表する機会が多く、年齢にすれば20代や30代前半の一般職の社員です。朝礼終了後、謹之助会長はその発表内容に関して不明点があると、その若手社員に声をかけ、

さっき話しよった、〇〇って、どがん意味ね?教えてくれんね」と近寄り、

その後、納得がいかれるまで質問されていました。私自身はその経験はありませんでしたが、朝礼を行う場所が丁度、人事部のデスクがあるエリアだったこともあり、謹之助会長と発表者とで、朝礼終了後、そのまま話が続くというのは良く見る光景でした。

私はその姿を見て、当時謹之助会長は80歳を超えられていたと思いますが、常に、自分にない知識を貪欲に吸収され、相手が誰であれ、自分が知らないことや分からないことがあると、素直に質問するという行動に驚くと共に、我社の社是の1つである「素直」を、謹之助会長ご自身が常に体現されていたのだと思えました。

 

 

【言葉の意味】

当時、一般職であった我々にも月に1回、会長講話を行って頂きました。正直、当時の私には難しい内容の時もありましたが、強く残っているフレーズに、

「言葉の意味は重要かぞ。辞書のあるけん、辞書ばひいて、言葉の意味ば理解せんばぞ」

があります。振り返ってみれば、会長講話の資料の余白に、単語の意味が謹之助会長の手書きで書かれていることがよくありました。“似ていて微妙な違いがある単語や、何となく意味を理解しているが普段あまり使う機会のない単語などは、よく意味を理解して使いなさい”という意図であったことに、正直当時は気付かず、その重要性を認識できていませんでした。しかしながら、最近特に伝える難しさを様々な場面で痛感しますが、その際にも、言葉の意味の重要性を感じます。また、ファンクショナル・アプローチの習得においても、ミッション・バリューの構築に携わった際にも、言葉の一言一言に対する意味付けの大切さを再認識しました。

 

 

【貪欲な情報収集】

ある会長講話の開始直後に、このような話を切り出されました。

「生命保険会社ば定年退職した男と、20代の若っか(若い)男が組んで、新しか保険会社ば作るごたんね。生命保険業界も面白うなって来るばい」

当時は、何を仰っているのかもよく分からず、何が面白くなるのかも、全くピンと来ていませんでした。ただ、当時の生命保険業界と言えば、世の中のことをほとんど把握していなかった当時の私でさえ、「生命保険業界に新参者の介入は難しいだろう」と感じるほど、大手生命保険会社が市場を占めていました。

それから、5年以上は経った後だと思いますが、「このことを仰っていたのか!」とやっと分かりました。会長が仰っていたその生命保険会社とは、今や誰もが知るあのネット保険会社の事でした。

自社で運営している業界のみならず、他業界、全世界から常に情報をインプットし、自社事業に生かせないか、自社にどのような影響が出るかを考え続けられていたのだと思いました。

 

 

「最後に」

 謹之助会長には、毎年新入社員に対しても、2時間の講話を行って頂いておりました。正直、新入社員にとっては難し過ぎる内容もあり、中には居眠りをする新入社員もおり、当時の新入社員に対し、講話終了後に厳しく叱責したこともありました。それでも、謹之助会長は、熱心に新入社員へ問いかけるようにお話される光景は未だに、記憶の中にあります。ここ10年以内に入社した社員は、謹之助会長の講話を直接聞いたことが無い社員になります。年月が経てば、社内に謹之助会長と直接話をしたことがない社員がどんどん増えていくことになります。企業理念、社是、誓いの言葉はもとより、謹之助会長が遺してくださった様々な教えを、しっかりと伝えていくことが我々の役割であると認識し、取り組んで参ります。

 

謹之助の語り部バックナンバーはこちら

一覧へ