謹之助の語り部 episode6
2021.06.30
謹之助の語り部

HIGUCHI GROUP創業者、樋口謹之助の言葉や逸話を、時代を越えて様々な社員が独自の視点で解説する企画「謹之助の語り部」の第6弾です。今回は、飲食営業の目指すべき場所であり原点である「お手軽割烹ひぐち」開業に込められた想いについての解説です。それではどうぞ。

 

飲食の目指す場所

飲食産業は、客の欲望に応えるために価値を提供していく産業であるが、客の要望は、医学的要素と宗教的要素の二要素から成り立っていると謹之助は考えていた。

医学的要素とは〈生きのびたい、健康でありたい、腹いっぱい食べたい〉という生理的欲望であり、宗教的要素とは、〈うまいものを食べたい、食べることによって安らぎを感じたい、食事を媒介として行事を行ないたい〉という精神的欲望である。この二つの要素を分析し、把握することから出発しなければ、客のニーズに応えることはできない。そのためには、栄養学はもちろん、生理学、心理学なども幅広く取り入れることが必要である。

飲食産業は、理論の時代、学問の時代に入った。家庭の主婦が料理をするのに理論はいらない。しかしわれわれはプロフェッショナルである。理論の裏付けがあって、はじめて主婦のつくれないプロの料理を提供できるのではないか。謹之助はそう信じていた。

産業文化史「大衆に憩いと安らぎを」(牧野 茂著)より

 

 

今回の語り部 : 営業部長 / 西村 壮平

食は人々にとって様々な意味を持ちます。1つは身体的な欲求によるもの。

  • 生命維持
  • 活動に必要なエネルギーの確保
  • 健康の維持・増進

簡単な言葉で表すのであれば、“生きていくために必要な食”ということです。しかしながら空腹を満たすだけの食事であれば、コンビニやファストフードが充実している今、飲食店の必要性はどこにあるのでしょうか。

もう一つは精神的欲求によるもの。

  • 食事を通し、繋がりを深める
  • 美味しい食事の満足感
  • 季節を感じたいなどの充実感

こちらは言い換えるならば“心を満たし、生きる活力となる食”ということになります。今の時代、高いお金を払えば誰でも高級店で美味しい特別感のある食を体験することができます。

では、ひぐちはどのような目的で飲食業を営んでいるのでしょうか。

勿論その原点は、「お手軽割烹ひぐち」にあります。『大衆に憩いと安らぎを』の中で謹之助前会長は「お手軽割烹ひぐち」を開業する際にこう宣言しています。

 

「お店の感じは、いわゆる割烹店のような上品なものにしたい。ただし、料理の値段はうんと安くして、だれでも気軽に入れる店にしたい。といっても、家庭料理の延長のようなものでもなく、あくまでもプロがつくった本格的な料理を提供するつもりだ」

 

ここから見て取れるのは、“本物の料理を大衆に楽しんでほしい”ということではないでしょうか。本物の料理とは、本来の食材の旬や素材の良さを最大限に引き出したもの。つまり、より健康的で素材の持つエネルギーを堪能できる料理をさします。そして、ターゲットとなる大衆とは、食事を楽しもうとするすべての人々の事です。我々はこの創業者の理念、想いをしっかりと引き継ぎ、お客様に商品を提供するべきであると考えます。

様々なお客様がそれぞれのシーンに合わせてお店を選んでいます。その中で、そのお店の最大限の商品を提供することが我々の使命です。その為に、料理人は経験だけでなく、理論や論理に基づいた商品提案が必要となり、サービススタッフは、お客様のニーズをしっかりと把握し、共有する必要があります。

我々は今後、自己満足に終わらないお客様を第一に考えた商品づくりをしていかなければなりません。そしてお客様へ“食で感じる価値の提供”を続け、大衆に愛されるお店を創っていきます。

 

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