猫は、最高傑作なのだよ。
23年も人生を共にした愛猫がいた。新婚生活のマンションに迷い込んできた家出猫。シャムの雑種で、12kgまで太った。もうタヌキにしか見えない。デブ猫の特集で、地元の新聞にも取材された。
娘2人の成長もしっかりと見守ってくれた。ソファにドテンと寝転がっているものだから、娘たちが交互にリビングにやって来てワシャワシャと戯れていた。このニャンコのおかげで、娘たちが自室にこもるようなことも避けられた。
腎臓を患ってはいたのだが23年の長寿を全うした。朝に小さな葬式を上げた。通夜の夜、親に泣いた顔など見せたことのない長女が、自室にこもって一晩中泣いていた。
あの日、あんなに、もう猫は飼わないと言っていたのに、今朝も、2匹の愛猫がカミさんの脚の間で寝ている。娘たちが東京に旅だったあとのお役目を、ハルとアオの2匹が全うしてくれている。いまやカミさんとの会話の7割は、2匹の猫のことだ。
レオナルド・ダ・ヴィンチは、「ネコ科の一番小さな動物は最高傑作である」と言っている。朝ごはんのときに、必ず、カミさんの席の後ろにある小さなステレオの上にハルが座る。次女が座っていたYチェアには、アオが座り、テーブルにひょこんと顔を出す。夫婦2人だけの完璧な朝である。
我が家は、最高傑作でもなんでもないのだけれど・・・
この2匹の猫がいるおかげで、
娘たちのいなくなった朝も、なんとかかんとか絵になっている。
文/中村修治
企画会社ペーパーカンパニーの代表取締役社長。PR会社キナックスホールディングスの取締役会長。福岡大学非常勤講師。滋賀県出身。Good不動産やJR博多シティのネーミングなども手掛けた戦略プランナー。西日本新聞「qBiz」やitMedia「BLOGOS」のコラムニスト。フェイスブックのフォロワー数は、9000人越え。