週イチ「たまりば」No.69 ワタシが”深爪”である理由。
2022.06.24
週イチたまりば

文/中村修治

企画会社ペーパーカンパニーの代表取締役社長。PR会社キナックスホールディングスの取締役会長。福岡大学非常勤講師。滋賀県出身。Good不動産やJR博多シティのネーミングなども手掛けた戦略プランナー。西日本新聞「qBiz」やitMedia「BLOGOS」のコラムニスト。フェイスブックのフォロワー数は、9000人越え。

 

ワタシが”深爪”である理由。

ワタシは「繊細」で清潔なデブである。デブと清潔は、見ればわかる。「繊細」を伝えるのに苦労する。繊細な人は、自分を繊細と言わない。そこでワタシは、黙って指を見せることにしている。指というより、赤ちゃんのような短い指の先っちょにある爪を見ていただく。

そうすると「うっそー痛くないですか!?」という決まり文句。床に落ちた下敷きがうまく拾えない。中途半端に切れちゃったセロテープの先っちょがうまく引っぱり出せない。ワタシは、すげぇ深爪なのである。最愛の人が死んでも腹は減る。爪は伸びる。ワタシが深爪でなくなったら、ボケのはじまりだと思っていただいて結構である。

斯くしてご紹介する道具は、独立起業した時からお世話になっている30年選手の「爪切り」である。ちょっと錆びているのだけれど手放せない。カレーと言えばおふくろのカレー。爪切りといえば、いつも手の届くところにある事務所の「貝印の爪切り」。この重さ。この切れ味。痛いところに届かない絶妙の深爪には、こいつじゃなきゃダメなんだ。

ワタシの1週間は、爪切りではじまる。月曜日に事務所に来たら、パソコンの電源を入れる前に、爪切りを持って事務所のテラスに出る。天気が良ければ椅子に腰掛けて。雨が降っていれば軒先に濡れないように佇んで。月曜日の朝に、パチンパチンと、完全無欠な深爪になる。

爪は、骨ではない。皮膚である。表皮でみられる角質層と同じように、爪のもとになる細胞が角質化したもの。だから、爪切りは「肌が合う」ことが最優先。いつもの角度でいつもの所にピシャッと刃があたらなきゃ絶対ダメ!!

ことあるごとに深爪を見せて「繊細」をアピールするのだが、大概、意外だと笑われる。「ただのデブじゃない」好感度は、こうやって上げる。「肌が合う」仕事相手は、こうして見極める。ワタシの深爪の指は、感度の高いセンサー。爪切りは、切っても切れないパートナーを探す能力を磨く道具なのである。

 

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