週イチ「たまりば」No.81 300年もたったの1枚!?
2022.10.20
週イチたまりば

文/中村修治

企画会社ペーパーカンパニーの代表取締役社長。PR会社キナックスホールディングスの取締役会長。福岡大学非常勤講師。滋賀県出身。Good不動産やJR博多シティのネーミングなども手掛けた戦略プランナー。西日本新聞「qBiz」やitMedia「BLOGOS」のコラムニスト。フェイスブックのフォロワー数は、9000人越え。

 

300年もたったの1枚!?

 

還暦の年に天災がやってきた。2021年末の豪雪が故郷(滋賀県彦根市)の実家を襲った。ワタシが生まれ育った大正15年築の母屋は、1m以上の積雪に耐えられなかった。「屋根がなゴンって落ちたぁぁぁ(T ^ T)」。滅多に直電なんてかけてこない87歳のおふくろは泣いていた。

実家を解体することを決めた。
生まれた故郷を真っさらにすることを決めた。
たったの7日で。

実家を解体するとなるといろんなものが出てくる。大したお宝は出てこないけど、ルーツだけは、見えてくる。どうやら我が家は、江戸時代中期から始まっている。享保6年は、西暦1721年。第8代将軍徳川吉宗の”享保の改革”の前のことだ。

ロシアがウクライナに侵攻した日に、こんなものが見つかった。TVも居間から無くなった実家では、世界の空気がちゃんと読めない。達筆な戒名の字とて判別できない。

市井で生きるとは、こういうことなのだ!? とご先祖さまが教えてくれているようだ。自分の知らぬところで、進むことだけが進んでいる。我が家の300年は、たったの一枚だ。

彦根仏壇は、立派である。おふくろが転居した後に、守り続けてきたお仏壇も、よそのお家にお引越し。意外とあっけない。

雪解けがはじまった庭に止まる軽トラ。
丁寧に運び出されるお仏壇。
去った後には、ズブズブの轍ができていた。

 

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