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今月のメッセージ

今月のメッセージ

Monthly Message

ひぐちグループ 代表取締役社長

樋口 益次郎

2022年3月のメッセージ

「お客様と共に成長する」

先月のコラムで「お客様と共に成長する」と記したが、これは我社ビジョンの中の
キーワードのひとつでもあります。
企業や店舗はお客様に対してモノやコトを提供して、その価値の対価としてお金を頂く
ことはあっても、お客様のご意見を頂く事は、参考程度のレベルである事が往々にしてある。

 

果たして、お客様は単にモノやコトの価値に対してお金を払う、
購入者としての存在だけなのであろうか。

 

改めてお客様との関係を考えみると、お客様の中には提供する側である我々プロと同じ
ように、受け手側のプロとでもいうべきお客様が存在することも忘れてはならない。

パチンコで言えば、手打ちのチューリップ台の時代から、大衆の娯楽として遊技されてきた、
パチンコの変遷をご存じであるお客様。飲食で言えば、舌の肥えたお客様などがそのたぐいであろうか。

そのような、我々以上に多くの経験を持つお客様からは、声だけではなく、仕草・態度からでも
多くを学び取ることが出来る。また、このようなお客様は、自分の存在によってお店が
成長することを大きな喜びとしているものである。

よくある事だが『常連のお客様に”こなされる”』ということも、その現象の一つなのでしょう。
そのようなお客様からは、時には厳しい言葉・態度を頂くこともあろうが、お客様からの
叱咤激励と捉えたいものである。
※『こなされる』とは、九州地方の方言で、鍛えられる等の意味があります。

 

このような経験が思い出される。
1980年代初めだったと思うが、米国のロードアイランドの大きな会場。
“Hard to Say I’m Sorry”が全米1位を取り、チケットは数時間で完売という、まさに飛ぶ鳥
を落とす勢いの『シカゴ』のコンサートで起こったこと。

お客様の期待とは裏腹に、その日のバンドの調子は信じられないくらい酷い状態であった。
スタートして30分ほどであろうか、一部のお客様がコンサートの最中だというのに、
背を向けてぽつぽつと帰り始めたのである。

その後も、どうしても調子を戻すことが出来ず、コンサートの半分を過ぎたくらいになると、
空席がかなり目立つ状態になり、そのままコンサートは終わったのである。

数か月後緊急追加公演が決定された。
これは私の推測であるが不甲斐ないコンサートに対するバンドのリベンジだったのであろう。
しかしながら、前回の公演でお客様の信頼を大きく裏切った事実は、追加公演チケットが
完売出来なかったことに、大きく表れていた。

アンコールとは本来ならば、公演の良し悪しの結果で行われるはずである。しかしながら
「お金を払っているから、要求するのが当然」と、さも権利だとばかりに、行われるのをたまに見かける。
これでは、アンコールの本来の意味をなさないばかりか、双方にとっても、より高みを目指すコトに
対する弊害となるモノである。

そう考えると『シカゴ公演』での評価のシビアさはまさにアメリカならではないだろうか。

 

このように良し悪しを言っていただけるお客様は、実に貴重なお客様であるが、多くの
お客様は物言わぬお客様である。提供した価値が良かったら客数や売り上げなりが
“じわっと”増えるが、悪かったらその逆で、稼働や客数なりが“じわっと”減る。
これがいわゆるサイレントカスタマーなのでしょう。

お互いの甘やかしが双方にとって良いことでないことは、何となくご理解いただけると
思うが、いささか厄介なのが、提供する側も受ける側も知らず知らずのうちに、上下関係
のようなものを築き上げてしまうことである。

お客様が提供者案を無条件で良いと評価してしまう事、その反対に、お客様は神様であると
いった、間違えた捉え方の提供者側が、お客様特に常連のお客様のいかなる言動をも、
受け入れてしまう事などがそれである。

 

最も重要なことはお互いが成長できる関係である事、
そこにはお互いが尊敬しあう関係があるのは言うまでもない。