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今月のメッセージ

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Monthly Message

ひぐちグループ 代表取締役社長

樋口 益次郎

寄道小径2022年6月

『ドラッカーの警告』

 

今やデジタル化で数少なくなり、やらなくなり始めたいろんな記事のスクラップ。
数あるスクラップで時折思い出させる記事がある。

1999年5月18日の日経新聞に“ドラッカーの警告”という表題でのコラムが掲載されていた。

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『米経済好調との報道に接するにつけ、米国の経営学者、ピーター・ドラッカー氏の話を思い出す。
ワインを酌み交わしながらの会話であった。

 

「 孫は今、15歳。コンピューターが好きでね。

朝から晩までそればかり。

我々の世代は車に熱中したが、今はコンピューターなんだね。

日本の15歳はどうしている?やはり、受験勉強だろうか」

ドラッカー氏は息子の話もしてくれた。

有名大学を出て、すぐに会社を設立し、成功すれば売り払う――

そんなことを何度か繰り返して富を築いたという。

「米国では称賛され、尊敬されることなんだ。日本ではどうなんだろうか」

ドラッカーはたんたんと語り続けた。

息子や孫のことを考えながら、日本を思い起こすのは、その将来を案じているからかもしれない。

 

こんな話を思い出すのも、米経済好調を「なぜ」「なぜ」と問うていくと、
社会風土や教育の在り方にたどり着くからである。そこまで考えなければ、米経済好調の秘密は分からない。

ダウ1万ドルの衝撃もさめやらぬうちに、1万1000ドルも超え、「10万ドルも夢ではない」という説まで現れた。
ただし、2024年の話。99年の1万ドルを24年前に予言した学者のご高説だけに、
単なる「夢物語」とも片づけられないリアルティーがあった。
米経済はマクロをみてもミクロをみても絶好調といっていい状況なのである。

理由はいくつも挙げられてきた。ルービン財務長官とグリーンスパン米連邦準備理事会(FRB)議長の巧みさとか、
コンピューター・通信分野の強さとか、冷戦の終結による「平和の配当説」とか・・・・・・・。

 

問題はその先である。もう少し「なぜ」と問う必要がありはしないか。

なぜ政策が巧みであり、企業は強いのか、80年代に先進各国から批判され続けた米政府と企業があっという間に変身を遂げることが出来たのはなぜか――と。一言でいえば、変革に対応するスピードであり、
その速さは、個人の様々な発想を生かせる社会風土とシステムにもたらされるということである。

変化の時代には、米国型のシステムが強いのは確かなようだ。米経済に不安はあるし、米国のシステムのすべてを
是とするものではない。ただ、その良い点を学んで損はない。
ところで、近くの子供たちをじっくり観察してみませんか。』

 

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ドラッカーが90歳、23年前の記事である。